お手当エピソード ●産前産後の方編 



●産前産後の方編 お手当エピソード

【病院・助産院・地域で活躍されている助産師さんや、セラピスト、整体師のみなさんからよせられたお手当エピソードです。
 ふんわりと手をあて、微細な波をとらえてじっと寄り添うこの手当は、マイナートラブルの緩和を優しく手助けし、心身の緊張をほどいていくのに有効です。母親になっていく道のりには「寄り添い」と「ぬくもり」こそが必要であり、身体だけでなく、心のケアにも多く活用されています。

*産前産後の方へのお手当は、助産師または、妊娠・出産・子育てについて学びを積んだかたのみに活かしていただきたく別途講習会を開催しています。】




産後に・・・

●右足が短く感じ、違和感があり、足をひきずるように歩く方にお手当て。手当後、ゆっくり起き上がって頂き、立ち上がり歩き始めると「あれ?普通!」と笑顔。スタスタ歩けるようになりました。

帝王切開後の褥婦さんは頭痛薬を2剤内服していて嘔吐されていまいた。深夜勤務が終わるとき(朝)に足のお手当を。翌日も就寝時に足から耳までお手当をしました。翌日から頭痛がなくなり、「ぐっすり眠ることができました。体中がぽかぽかしました」とお手紙をいただきました。頭痛がなくなり、薬も内服していないとのことです。 

恥骨の痛みがある褥婦さんへ。お手当後に痛みが軽減。両手で支えないと痛くて曲げられなかった膝がスッと曲げられる。「あれ?痛くない」と笑顔。スタスタ歩けるようになりました。

恥骨離開(1指強、約1.5cm)にて仰臥位でひざを立てることができず起き上がるのも困難な産後の方。ベーシックのお手当を一通り、午前中1回目のお手当後恥骨の圧痛が緩和し、ひざを立てることができる。起き上がることはできるけどまだ歩行困難。午後2回目のお手当後圧痛なくなり、恥骨離開幅が減り(1cm弱まで)、起き上がりは大分スムーズも歩行はすり足。翌日夜勤で出勤した時にはまだ痛みは残るが歩けるようになっており、昨日とは全然違うと。2回目お手当後に楽になったと言っていました。3回目お手当し、反応もよく、退院の頃には普通に歩けるようになり帰られました。クラニオはすごい!と感動したお手当体験でした。

死産で生まれた赤ちゃん。お母さんはなかなか赤ちゃんに会おうという気持ちになれなくて産後会えていませんでした。赤ちゃんにお手当てしながら待っていたらお母さんが会いにきてくれました。

●帝王切開後頭痛が取れなくて、明日が退院というのに点滴で補液をしていて、鎮痛剤が手放せない...というママ。どうやら肩~首も凝って痛いらしく、実際触るとガチガチ。座っていると頭痛が辛いと言って、添い乳をされていたので、そのまま側臥位でお手当てしてみました。指がピクピクし始め、ママの寝息が聞こえた頃、肩甲骨付近がゴソゴソっ!動き、少し緩んだか?!と思われる反応が!骨盤もお手当てしてみたのですが、手が離れない感覚と、凄く動いてました。(助産師Sさん)

●産後2週間後の健診。腰痛をうったえる経産婦さんに足と梨状筋と骨盤、お腹、肩甲骨と耳のお手当しました。足が冷えていましたが、全身あたたまってきて眠くなってきたご様子。腰の痛みは取れないだろうけど!と思って、ホントに軽く10分くらいですがお手当しました。ベッドから起きてみたら、あれ?あれ?と笑顔「痛くない。すごく楽になっている!」と言っていただけました。(助産師Oさん)

●腰痛の妊婦さん・・お手当してみると、原因は右股関節にある様子。お手当後にセルフケアとサラシの使い方を伝えてが、その後腰痛も消えてサラシも使用しなくなり分娩に至る。⇒分娩後、母乳の相談で呼ばれてお手当すると、またもや股関節に課題がありそうで尋ねると、分娩中に亜脱臼になったらしいとのこと。お手当で何とかなるのか??と思いながら実施。一通り終えて、再度股関節に触れると「ボコン」と音がして「あ。治った!」と。不思議・・・(助産師 Eさん)

●右股関節痛が悪化して歩けない程の妊婦さん・・・10分くらいのお手当。お試し程度に、さらっと終わらせたつもりだったが・・・直後から痛み消失。あれから2ヶ月、一度も痛くなっていないとのこと。(助産師 Eさん)

●骨盤位のため帝王切開で生まれた赤ちゃん・・・破水して、片足が子宮口に侵入していたとのこと。どっちの足かな~?と思いながら、右足に触れると、股関節が何度も音を立てて動く様子が伝わって来た。赤ちゃんが、こっちの足だよ~~って差し出してくれていたのかもしれない。(助産師 Eさん)





乳房ケアに・・・

●産後1カ月未満の方二人のおっぱいケアを行いました。二人とも分泌過多で、乳房の部分的にではありますがかなり大きな硬結があって、少し触っただけでも顔をしかめるくらい痛みを伴っていました。お手当てといっても、内旋と足と耳をやっただけ。しかも全部合わせても5分程度。その一瞬で寝息が聞こえ、お互いにお腹が鳴ったり、足先、指先が動いていたので緩んだことを感じました。お手当てを終えて乳房に触ると、硬結が小さくなっていて、最初よりも乳房全体がフワフワしていました。触った時にもちろん痛みも殆どなく、いつもは痛くて力が入ってしまうマッサージが、半分ウトウトしながら受けられたと言って頂きました。(助産師 Tさん)

● 第3子出産後約1週間の方にお手当て。
第2子との間が8年くらいかな。久々の妊娠・出産でお乳の出が以前よりよくない。
お手当てしている間にお乳が張ってきました、と。

乳腺炎で母乳マッサージ中のお母さんに、足のお手当、私が触っている間だけ、とても分泌が良くなり、手を離すと元通り、という事があり、他のスタッフとも驚きました!


乳腺炎で分泌が落ちている方にすると、ケアの前後で明らかに分泌量が変化し湧き出た様子には驚きました。



妊娠中に・・・

「お腹が張りっぽい」と言う妊婦さんにお手当をしました。お腹に触れていたら、張りが落ち着いき、あかちゃんもポコポコと動くのが分かりました。

内旋をしようと片足に触れた瞬間に、外側からもわかるくらいにハッキリと、妊婦さんのお腹が左右に波打ちました。お腹の赤ちゃんが大きく動いて、まるで挨拶をしてくれているようでした!

予定日1日遅れの妊婦さん。マタニティヨガクラス終盤のシャバアーサナ時に1分お手当。お手当中にお腹の赤ちゃんがぐーっと大きく動き、その日の夜にお産になりました。

 切迫で入院している妊婦さん。張りっぽいとナースコール。お伺いしてお腹を触れていたら落ち着いて赤ちゃんもポコポコと動きを感じました。

妊婦さんへの手当は胎位、胎向、胎勢を整え、お腹もふんわりまぁるくなる感じです。
昨日ケアさせてもらった妊婦さんは、お腹の赤ちゃんが気持ちよさそうに踊っているみたいと言われていました。そして何よりリラックス効果が高いのがいいですね。

予定日から2日過ぎた妊婦さん、アレルギー性の咽頭炎とのことで臥位だと咳き込む状態。マタニティヨガクラス終盤のシャバアーサナ時に1分お手当。ヨガ終了後、咳も落ち着き、助産師さんに診察していただき、その日の夜22時にお産に^_^

36週骨盤位のお母さんにお手当。その夜に頭位に戻りました。お母さん自身もわかっておられましたが、赤ちゃんとじっくり向き合ってくださいとお伝えして、お風呂の中で話しかけて、その夜に戻ったそうです。

2週間後に帝王切開予定が組まれていた妊婦さん。
側臥位で仙骨と背中、そして頭に手を当てていると、ふわーっと肩のあたりから体が溶けていくように広がるのがわかりました。お顔を見ると涙も流れていて。
お腹に触れると、赤ちゃん、ぐ〜っと大きな動きで何度も伸びている感じ。
起き上がった時にはお腹の形が、扁平気味な横広がりから、前に向かってまあるい形に変わっていました。ご本人は「この頃きつくなっていたお腹の張りがなくなり、柔らかくなった」とのこと。翌日、健診で、逆子が直ったと知らせがきました。

●切迫早産の治療の副作用が辛く呼吸が苦しくて、吐いている妊婦さんがいました。
 先輩助産師さんに「私に前やったあれを○○さんにやって!」と言われて、お昼前に、その妊婦さんへ側臥位でのお手当しました。その後楽になりましたと食事もされていました。手を当てているところがじんじんすると言われました。(助産師Oさん)

切迫早産の方にお手当て。
動悸や嘔吐が続いており、メンタルもかなり落ちている方にクラニオ。
カラダのピクピク反応が凄くて1時間程施術をしたら別人のように表情が和らぎ、動悸、嘔吐症状も治まりました。 (助産師 Tさん)

お産の前に・・・

口数の少ない妊婦さん。なかなか陣痛が強くなりきらず、仙骨あたりをお手当てしたら泣きながらいろいろお話ししてくれました。
ひととおり話終わると、ぐんっと陣痛が強まり、まもなく赤ちゃんがうまれました。

陣痛が始まる前日に夜更かしをし、明け方に就寝→その2時間後に陣痛開始。
微弱陣痛のままで子宮口も開きが悪く、なかなか進まず夕方になってしまった、お若い初産婦さん。寝てないし痛いしでグッタリされていたので、足と腹膜のお手当。3時間後には産まれました!

分娩介助担当になった段階で、子宮口2cm開大の初産婦さん。陣痛は3〜5分ぐらいで来ているけれど強弱あり。嘔吐を数回し、一気にぐったりされていました。そこでお腹と腰を中心にお手当てを開始しました。痛みで緊張ぎみでしたが、間欠時にうとうとし始めました。
間延びするし、強弱は続き、うとうとしているなと思っていたら、お手当て開始後4時間もしないうちにお産になりました。ご本人からそばにいてもらっていたら、痛みが違ったと話してくださいました。
夜中か朝方にお産になるだろうと思われていましたが、日付けが変わる前に生まれて、驚かれていました。

少し間延びしてしまった陣痛中のお母さんに側臥位でお手当、手を当てている間、不思議な夢のような、デジャヴのような、景色をずっと見ていて、すごく幸せでした。と。その後、陣痛が強くなって生まれました。

緊張と不安で、身も心もガチガチの産婦さんにお手当すると、すーっと寝て、起きたら陣痛がぐんぐん強くなり、ガチガチの身体も気持ちも陣痛の波に乗れるように変化し(すごく自然体になってる)、お産になる。ということはよくありました!

切迫早産と妊娠高血圧で安静の期間が長かったお母さん。正期産に入り、破水後陣痛開始し、出産へもともと下肢の浮腫はあったのですが、産後浮腫が増強。
浮腫の痛みが精神的にもつらかったようです。フットポンプをつかってもらいましたが…どうも巡りが悪く感じられ。朝、お手当を。
「さっき今までにないくらい何回も尿がでました。すっきりしてむくみも楽になりました」と笑顔になっていました。昨日は真っ白だった顔色が、頬に赤みがさしていました。確かに浮腫も軽くなっていました。



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助産師の皆さんへ 

      (Umiのいえ代表 齋藤麻紀子より)

この度は、頭蓋仙骨療法ベーシックセミナーご受講ありがとうございます。

頭蓋仙骨療法は、アメリカから渡ってきた比較的新しい療法ではありますが、
この手技にであったとき、私は「助産師さんの仕事ぶりに似ているなあ」と思いました。

実際にやってみるとわかるのですが、
やることは「待つ」「寄り添う」「引き出す」です。
余計な圧で介入しない。
相手の身体が奥底から動き出せるよう、寄り添って手伝うだけ。
産む力、生まれる力、抱きよせる力を引き出すような「助産」に似ています。

私たちが目指す「和の頭蓋仙骨療法」のお手当は、相手をどうこうするのではなくて、
相手が自分で排毒や傷の癒しなど、自分で治っていく(戻っていく)力がわくように、そっとお手伝いをするだけなのです。
「手」と「相手の力を信じる」気持ちがあれば、
どんな場所でも、道具や電気がなくても、手助けができます。
それは、まるで、どこででも赤ちゃんを取り上げる産婆さんのようです。

このように、共通点がたくさんあるので、
助産師の皆様には、本当に使いやすいお手当だと思います。 
そして、今ではあまりされなくなった「触診」の感覚を磨くのにも、最適な技と思います。

これまで、この手技を学んだ助産師さんたちからの報告では、
骨盤位、前置胎盤などのケア、陣痛中、分娩時はもちろん、
恥骨痛、睡眠障害、鬱、月経遅延、性交痛などなど
身体の中がよじれてたり、癒着してしまって起きているであろうことや、
自律神経からおこる不安定な問題などを、緩和・解決に導いていらっしゃいます。

なにより、身重のからだ、産後のからだに、助産師さんが触れてくださるひとときは、何にも代えがたい安堵であり、一生心に刻まれる幸せな思い出です。
その体験は、子を愛することや次の女性の力になる「思いやり」をその人に根付かせていくのです。
流産・死産のときなども、何も言わずにただ手を当てていただけたら、安心して涙を流せます。

身体が緩めば、心も緩みます。心緩めば、ゆるせるし、ゆだねられます。
緩めばよく眠れますし、緩めば力もわいてきます。
どうぞ、助産師さんの手で、お母さんたちを緩めてください。 

手当に慣れて手の感覚が冴えていけば、もっと感受性があがります。
感受性があがれば、もっともっと、助産は楽しくなっていくのではないでしょうか 

どんなに時代が変わっても、この国には助産師さんが必要です。  
どうぞご自身の手を誇りに、これからもお元気でご活躍ください。